熱中症 対策情報

伏見工ラグビー部員死亡 熱中症悲劇防げ

- Nobu

2011/09/14 (Wed) 10:44:07

全国高校大会優勝4度の名門・伏見工ラグビー部の3年生部員が10日、熱中症とみられる症状で練習中に倒れ死亡した。9月に入っても厳しい残暑が続く中、全国舞台を目指す京滋の強豪校は、どのような熱中症対策を施して練習に励んでいるのか。医師のアドバイスとともに紹介する。

■水、塩分補給/朝夕に練習

 全国高校大会に25度出場している八幡工ラグビー部は練習中に随時、水を飲むようにしているほか、選手の様子を見て木陰で休み、水分や塩分を補給している。小宮山彰人監督は「一度涼しくなり、体調管理が難しい時期。選手はしんどくても我慢してしまうので、少しでも『おかしい』と感じたら申し出るように日ごろから言っている」と話す。京都府内の高校の中には、朝夕の涼しい時間を選んで練習しているラグビー部もある。

 真夏に公式戦を行う野球部も各校ごとに工夫を凝らす。京都外大西は2001年7月、練習中に部員10人が熱中症で倒れた。現在は、気分が悪くなった選手が出ると、日陰へ移して脇や足の付け根などを冷やし、すぐに救急車を呼んでいる。上羽功晃監督は「10年前の事故を教訓に、選手が倒れた時は自分たちで症状の軽重を判断せず、病院へ連れて行く」と話す。

 今夏の甲子園に出場した龍谷大平安は、練習や試合中にスポーツ飲料を積極的に飲むように指導する。夏場の最高気温が連日40度に迫る中米のグアテマラで指導経験がある福知山成美の田所孝二監督は「中南米の監督は暑い日には練習を控えていた。私も暑い日は練習量を大幅に減らす」という。一昨年の夏に甲子園初出場を果たした滋賀学園は、食塩を積極的に摂取させているという。

 サッカー界は、真夏の試合では審判がゲームを中断し、水分を補給させる。昨年のインターハイに初出場した莵道の青島高史監督は「塩をなめさせ、サプリメントでミネラルも補給する」と話す。昨年度の全国高校選手権で準優勝した久御山は年に2度、専門家に栄養指導を受けている。松本悟監督は「食事による体力強化も熱中症予防には欠かせない」と強調する。05年度の同選手権を制した野洲の山本佳司監督も「真夏は日中の練習を極力避けるようにしている」と対策を怠らない。

 全国高校駅伝女子で2度の優勝を誇る立命館宇治は、夏場の日中の練習を避け、選手全員の脈拍数や体温を測定して体調の変化に気を配る。荻野由信監督は「睡眠不足など生活リズムの乱れも熱中症につながるので見逃さないようにしたい」と注意点を交えて話す。

 ボクシングは減量が必要なこともあり、各校とも体調管理や水分補給に神経をとがらせる。全国大会の常連・南京都の西井一監督は「水分を必ず補給する時間を用意している。無理な減量が必要な階級はやらせない」と力を込める。

 京都精華女の運動部員は年度当初、講習会で熱中症への理解を深めている。強豪のバスケットボール部は、熱のこもりやすい体育館で練習するため、窓を開放し、大型扇風機を数台置いて通気性を良くしている。温度計や湿度計も備える。山本綱義監督は「いつでも(水筒に)手が届くようにしている」といい、1時間ごとに全体休憩も取る。「自己管理はスポーツ選手の基本。自分で自分を守るように常に言っているが、我慢する子もいるので強制的な休息も欠かせない」と話す。

 陸上部やバスケットボール部などが全国屈指の強豪の洛南の運動部員は、年度当初に心電図や血液検査などの健康診断を受ける。陸上部の柴田博之顧問は「短時間の休憩では呼吸が回復しても熱は下がらない。10~15分の休息を取り、指導者も日陰ではなく生徒と同じ場所に立つようにしている」と話し、「競技力向上を目指すが、一番は命。本当に怖いし、難しい」と苦悩も口にする。

■予防が大切 正確な知識を 医師指摘

 京都府医師会スポーツ医学委員会副委員長の福山正紀医師は「熱中症の症状は本人でも判別しにくいので、予防を重視すべきだ。近年は気温変化が急激な上、体がエアコンに慣れていることもあり、順応が難しくなっている。9月もまだ暑い日が続きそうなので、練習中は水分補給を常時チェックしてほしい。気温、湿度、日差しの強さを計る『湿球黒球温度計』を使い、時には練習内容を軽くするなどの配慮もしてほしい」と話す。

 京都府高野連と協力して熱中症やスポーツ障害の予防に取り組む京都府立医大付属病院の森原徹医師は「真夏だけでなく、今回のように一度気温が下がり再上昇した時も危ない。合宿の初日なども同様に事故が起こりやすい。体育の授業でも起きうることなので、各学校は熱中症の正確な知識を学び、予防意識を高めてほしい」と指摘する。

【 2011年09月13日 09時14分 】京都新聞

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